2010年02月28日
村全体がFSC認証林の宮崎県諸塚村(もろつかそん)
◆ 「山村再生全国研修会」開催される
ここのところ、山村関連のご縁が続きます。2月25・26日と東京で開かれた「山村再生全国研修会」で、事例報告やビジネス研修を務めさせていただきました。また、来週末(3/6)は、浜松市(天竜壬生ホール)で開かれる「まち・もりシンポ「都市×森林=∞」で、トークショーやシンポジウムの進行役を務めます。これに先だち、登壇者のお一人で、直木賞作家三浦しをんさんの『神去(かむさり)なあなあ日常』という小説を読みました。高校卒業と同時に三重県の山奥の村に送り込まれた青年の、1年にわたる林業体験や、山で暮す人々との交流を描いた作品です。宮崎駿さんも本の帯を書かれていますが、『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』ファンの私にとっては、宮崎映画を見ているような感じでした。
さて、「山村再生研修会」の研修テキストを作成するために、何カ所か山村を訪問させていただいたのですが、その一つが、宮崎県諸塚村でした。林業で元気な山村づくりを続けています。昨年10月現地を訪問し、諸塚村企画課長で「諸塚村産直住宅推進室事務局長」兼「諸塚村観光協会事務局長」の矢房孝広さんにお話をうかがいました。矢房さんは、建設会社で10年勤務した経験を持つ一級建築士でもあります。
ちなみに、この「山村再生全国研修会」というのは、林野庁補助事業「平成21年度山村再生総合対策事業」の一環で行われたもので、全国から約100名の関係者が参加されました。
※山村再生全国研修会テキスト http://www.jafta.or.jp/13_sanson_hp/kenshu/text.html
参加されている方々が各地で取り組んでいる活動は、林業やバイオマスのような森林資源を活かした事業はもちろんですが、大学生が中山間地の棚田の米をWEBサイトで販売するプランや、間伐材と組子技術を活用した組み立て家具、森林セラピーや温泉・野草・薬膳料理などの健康増進、園舎を持たず森の中で子供を養育する「森のようちえん」などなど、"森の恵み"を活かした興味深い取組みが沢山あり、またまた感激していました。
◆ 諸塚村 森林認証林による家づくり推進
宮崎県東臼杵郡諸塚村は、九州山脈中央に位置する面積18,759ha、人口1900人700世帯の山村です。宮崎空港から車で2時間半位。95%が山林、88の集落が点在しています。1907(明治40)年に"林業立村"を村是で宣言した村です。1948(昭和22)年から、16の公民館(建物ではなく、集落単位の組織)と呼ばれる組織ができ、行政とは別に相互扶助の地域社会運営体制があります。
山林のほとんどが民有林で、国の森林政策では針葉樹の一斉造林が進められましたが、諸塚村では適地適木の造林を行い、針葉樹と広葉樹を混植し、今では山は"モザイク林相"となっています。中規模林家20~30haが多く、家族経営で、シイタケ、茶、牛という"諸塚型複合経営"が営まれています。
山間に点在する集落。山裾に広がる茶畑
林間放牧されている牛
シイタケ栽培発祥の地。原木栽培100%
◆ 産直住宅 累計で210棟に
村は、1995(平成7)年に、(財)ウッドピア諸塚を設立し、林業技術者集団を第3セクター化しました。
翌年、「産直住宅プロジェクト」が始まりました。役場、森林組合、設計士、工務店などが共同で"産直住宅"に取り組みます。1997(平成9)年から、"産直住宅"の供給が開始され、2009年12月末現在、累計で210棟が九州圏内に建てられました。リーマンショック以降も、特に影響を受けることはなく、今年度も30棟できたといいます。
産直住宅のこだわりは、単に地域の木材を使うことだけではありません。伐り旬を守り、山に葉をつけたまま寝かして乾燥させる、昔ながらの"葉枯らし乾燥"を行っています。
2004年11月にはFSCを取得しましたが、村全体での取得は日本初です。今では村役場内に、村産FSC材でできたベンチなど、材の実物を見ることが出来るコーナーがあります。また、諸塚村で生まれたシイタケは、FSCのCoC認証(流通の認証)も取得しています。
地元の材を使ったベンチ。FSCの刻印も
目標は年間14000立米の1割1400立米を産直住宅に出すことで、一棟に約20立米使うので50棟程度に相当します。同村の産直住宅は九州限定です。その理由は、①輸送に伴う環境負荷 ②身土不二 ③見に行ける範囲という3つです。「小さな経済、小さなネットワーク。地産地消が基本で、全国各地にそういうものができればいい。」と矢房さんは言います。
そして、今日ではウッドピア諸塚の職員は事務職を含めて23人になりました。林業作業だけでなく、農林畜産物の開発・販売なども行っています。20代4人、30代8人で、平均年齢が28.4歳と若者が多いことも特筆すべきでしょう。
※諸塚村産直住宅 http://www.vill.morotsuka.miyazaki.jp/10jyutaku/10jyutaku.htm
◆ 密度の濃い交流で地域を盛り上げていきたい
諸塚村では、この10余年、都市部の人々との交流にも力を入れてきました。97年から開始した「木材産地ツアー」を皮切りに、98年~「山林塾」、98年に築130年の古民家を山村体験宿泊施設「やまぎしの社」として整備しました。一泊3,000円で30人が泊まれます。そこを拠点に99年~「諸塚型オリジナルエコツアーを開始しました。
2001年には、交流拠点を「エコミュージアムもろつか しいたけの館21」としてリニューアルオープンするなど、交流活動に力を入れてきました。木材産地ツアーはこれまでに60回も開催されています。
山村体験宿泊施設「やまぎし社」
囲炉裏のある広間
土間にはかまど、使い勝手の良さそうな調理台
現代風五右衛門風呂?ちなみにトイレは洋式
近隣の高千穂町は観光ブームで去年は150万人が訪れたそうですが、道路は渋滞し、食堂は混んでいますが、土産物は地域外のものが多く、客単価も低く、必ずしも地元経済への貢献は多くないといいます。
矢房さんは、「諸塚村の年間の交流人口は6万人と決して多くはないが、そのうち1500~2000人はしっかり交流できている。それぞれが、10,000円を地域で使えば2,000万円の経済効果になります。これが1万人になれば1億円になるんです。」と言います。
確かに、諸塚村産の木材で家を建てた人にとって、諸塚村を第二の故郷のような思いで何回も訪問する家族が少なくないのでしょう。
※交流拠点「エコミュージアムもろつか しいたけの館21」
http://www.vill.morotsuka.miyazaki.jp/08mori/08_01.htm
◆ カーボンオフセットJ-VER制度に登録
昨年から注目を集めている国内の森林由来のクレジットJ-VERは、新たな施業により追加的に発生する年間生長量に応じたCO2吸収量をカーボンオフセットのクレジットとして認めるものです。これまでに、全国各地で20のプロジェクトが登録されています。諸塚村も昨年12月に「諸塚村森林炭素吸収量活用プロジェクト」が登録されました。並行して「カーボンオフセット住宅推進委員会」も設置し、木造住宅の炭素固定量の評価手法を開発しているところです。
「FSC認証やJ-VER制度を通じた資金環流と信頼性の高い森づくり、ウッドピア諸塚などによる林業の後継者づくり、そしてユーザーとの顔の見える関係での家づくりで、持続可能な環境共生の村づくりを今後も続けていきます」と矢房さんは熱く語ってくださいました。

